Cesare
チェーザレ
ALBERTTO DELLA TORRE|PIEMONTE
ワインヴィネガーの常識を超える
◭美食家に愛されたリストランテ
ピエモンテ、バローロから東へ5km、人口300人の村、アルバレット・デッラ・トーレに、今も美食家達に語り継がれるレストランがありました。リストランテ・デイ・カッチャトーリ。
シェフ、チェーザレ・ジャッコーネによる、このレストランは彼の控え目な人柄の為、ミシュラン等のレストランガイドの掲載を拒んでいたので目立つ存在ではありませんでしたが、地元はもとより世界の美食家達に愛された名店でした。
『チェーザレ・ジャッコーネは並外れた才能を持っている。常に常識外で新しいヴィジョンも持っている。彼の料理は非常に複雑であると同時にシンプルでもある。私は彼の料理を忘れることができないだろう』アメリカNO.1シェフ、トーマス・ケラーはチェーザレの料理をこう評しました。
70年代、チェーザレはランゲの伝統的アチェート・ディ・ヴィノ(ワイン・ヴィネガー)を探しますが、見つける事ができません。仕方なく、自分のレストランで使う為にアチェート・ディ・ヴィノを作り始めます。地元、ランゲ地方の伝統的なワイン。しかも、最高峰の造り手のワインを使い、何も加えず、地下セラーで熟成させた伝統的アチェートは、芳醇な香で旨味が強く、一般的なアチェートとは全く違うものでした。
◭料理を引き立てる
イタリアでは、多くのシェフが菜園や農園を持ったり、家禽を飼育したり、葡萄やオリーブを栽培したり、自分の手で料理の素材作りをするのが一般的です。その中でも地元のワインから手軽に作る事ができるアチェート・ディ・ヴィノは、シェフだけでなく、広く家庭でも親しまれていました。
『チェーザレはあまりにも日常的な調味料とされてきたアチェート・ディ・ヴィノを料理の素材、また特にワインとの相性において重要な要素だと捉えていたのです。ランゲの恵まれた環境の中でバローロ、アルネイス、バルベーラ等、それぞれのワインの特質を活かし、熟成させたアチェート・ディ・ヴィノを料理によって使いわけていました』
90年代に入ると、チェーザレは、伝統的アチェート・ディ・ヴィノが理解されていない事を嘆き、高級食材店、ワインバー、レストラン等への販売を開始します。チェーザレが亡くなった今では、息子、オスカーが引き継ぎ、イタリア国内は勿論、世界各国、日本でもチェーザレのアチェート・ディ・ヴィノは愛されています。
◭ノン・フィルター、熱処理もなし
アチェート・ディ・ヴィノは、この地方の伝統に則り作られます。地元の伝統的なワインから作る事は重要です。勿論、最高の造り手のワインを使います。ワインは、ゆっくり桑の実やオーク、チェリーの古い樽に入れられます。樽をいっぱいにする事なく、空気と触れ合う状態のワインにマードレを加えて冷暗所で保管します。ほかに何も足しません。
『本来の風味を保つために、フィルター処理や熱処理等をしていませんので、瓶内では酵母が生きています。その為、あえて瓶は完全密閉されていません。また、瓶内に白っぽい浮遊物、または沈殿物が見かけられることがありますが、これは葡萄の皮および長期熟成によりヴィネガーの成分が析出したものです』
通常のヴィネガーと同じく、色々な料理の調理に使えますが、葡萄品種ごとの香や味わいの個性を活かして、料理の仕上げに一振りするだけで、料理に奥行きが出て、輪郭がはっきりしてきます。チェーザレのアチェートは料理に格を与えてくれるようです。
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